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洗顔石鹸の秘密ならここへ

世界、とはいっても今回は江戸川乱歩特集のため撮影は都内近郊だという。
なら丸ー日で終わるだろう。
「あ、いいですよ」と軽くこたえたところ、大変なことになった。
早朝から夜までビッシリと丸7日間もかかったのだ。
きっと竹内力なら極道もののVシネマ2本は撮れるスケジュールであろう。
いやよく知らないけどね。
初日は朝8時に浅草集合だという。
もーヒーヒー泣きながら起きる。
浅草寺でロケ始まるも頭が完全に寝ている。
午後になり新橋の紙幣博物館に移動。
怪人二十面相のコスプレして、「わかるかね黒柳くん、ワーハハハ」などと演技するも相変わらず脳内はレム状態である。
続いて世田谷の近代文学館へ。
ここで「高原」という古い雑誌を見せてもらう。
「高原」の中に「間島方面宣伝戦一班」と題した従軍記録があり、著者の名は「江戸川乱歩」と印刷されている。
しかし、乱歩が従軍記を書いたという記録は見つかっていない。
さらに、「間島」が出版された年は乱歩が「二銭銅貨」で作家デビューする2年前の出来事。
なぜ?実は、「間島ー」を著した人物は探偵作家の乱歩とは同名の別人で、戦争中に秘密諜報部員だった辻村義介という男。
番組はこの謎の人物と探偵作家の乱歩の関係を追跡していく構成。
いわば「初代乱歩」である辻村の激レアな出版物を間近にしてはさすがの寝ボケ男のオレも興奮だ。
クワツと目が覚めた。
と思ったらすでにもう夜で本日の撮影終了。
翌日は午前中より両国江戸博物館で撮影。
お江戸日本橋の2分のーレプリカや、明治和洋折衷家屋の実す大モデルなど、ごく一部のマニアにはたまらないであろう資料が山と展示されているが、果たしてこの世に明治和洋折衷家屋マニアが一体何人いるというのだ?奇妙に賛沢をつくした場所である。
乱歩の「押し絵と旅する男」に登場する「浅草十二階ーの縮小モデル(これもマニアだ)の前都内編232で撮影。
浅草へ移動し、「やきかっ」をお昼に食べる。
揚げたてのとんかつをよく焼けた鉄板にのせてその上からソースをたらす。
ジュッ!と四方にソースと肉汁が飛び散り、まあなんとも美味い。
3日目には信濃町ハチミツ会館と浅草花やしきでロケ。
早起きに追い打ちをかけるように、とにかく寒い。
4日目は渋谷109前で、乱歩のパネルを背にしたカットを撮影。
パネルが倒れるとどんでん返しの要領で渋谷の人ゴミが現れる。
寺山修司の映画「田園に死す」ラストシーンへのオマージュである。
この日も寒い。
全身にホカロン9個貼る。
5日目、横浜にある文化財産、旧屋敷その名も横溝屋敷で朝8時よりロケ。
真冬の古い日本の屋敷の寒さといったらどうにもならない。
寒い。
寒い。
ひたすら寒い。
オレなんかは管理人室で暖をとれたからまだいいが、スタッフは丸ー日極寒の中で撮影である。
頭が下がる。
ホカロン貼って横溝屋敷の天井裏で乱歩のエッセイを読む。
この日、ジャイアント馬場死す。
6日目、この頃になるとスタッフ聞に連帯感が生まれる。
233百ー歩を探して施都東京のアチコチでプルプル俊えた立教大の図書室で撮影の後、全員が「もぐり学生ーと化して、学食で昼メシをハグハグと食べる。
カツ井と豚汁。
非常にまずく量たっぷり。
当然のごとき学生の味が懐かしい。
食後、江戸川乱歩邸にて撮影。
乱歩の家には今でも土蔵がある。
ミステリー、SF、さらに異常心理や性犯罪に関する資料文献が鬼のようにつまっている。
うす暗い蔵をー歩入ればすぐそこに黒岩涙香の初版本や激レア必至のSF本などがあり、たまらぬものがある。
あまりに表紙が怖すぎたために少年読者が心臓麻癖で死んだとの伝説を生んだ講談社の江戸川乱歩シリーズも全8巻揃っていて個人的に大興奮した。
大人になって見てもこの絵は震えるほど怖い。
蔵の中がまた極寒で本当に体震える。
再びホカロン。
応接間で乱歩の御子息・平井隆太郎先生にお話を伺う。
辻村義介のほかにも、実はもうー人江戸川乱歩を名乗る第3の男がいた、との衝撃の告白が先生よりあった。
「えっ日先生それは誰げ」と尋ねれば先生、「うーん…」と静かにおっしゃったものだからTピックリこける。
結局、詳しくはわからない、とのこと。
マロングラッセはうまかった。
「…あ、としばし熟考された後、マロングラッセ食べませんか?」そしてついに最終日。
府中の米軍キャンプ跡地にてロケ。
朝8時集合。
今は廃屋のキャンプ跡は言うまでもなく極寒。
オレはロケパスでヌクヌクしておったが、スタッフは丸ー日外撮影である。
「つらくないですか?」と愚問がつい口に出る。
「いやいい絵が撮れればそれが最高の喜びですから」とディレクターの鬼頭さんは当然といった感じでこたえるのである。
「世界エライ人大賞」かなんかあったらオレは迷わず『ふしぎ発見』の撮影スタッフにあげたいね。
日もとっぷり暮れた頃撮影終了。
お疲れさまでした。
ではクェスチョン。
さて、極寒にも文句ひとつ言わないスタッフの陰で「寒い」「眠い」と弱音を吐き続けたTが、撮影中に使ったホカロンの数は一体いくつ?おや、黒柳さんおー人がスーパーひとし君ですね…。
ずっと探していた本を早稲田で見た、という友からの情報をたよりに、ポンと空いた仕事の合間に電車にゴトゴト揺られて行ってみた。
残念ながらお目当ての本は見つからなかったものの、冬にしては暖かい、よく晴れた日の古本屋街をホテホテと歩くのはとても気持ちがよかった。
せっかく訪れたのだからと古本をー冊購入した。
シャーロック・ホームズの活躍をマンガ化した「緋色の研究」である。
原作は言うまでもなくコナン・ドイルだ。
作画は小林たつよしという人が担当している。
奥付には一九九六年十月二十日初版第ー刷とあるから、わずか3か月で古書店の棚に置かれたということになる。
わずか3か月の聞にこの本の持ち主に一体いかなる心境の変化があったのだろうか?ー冊の本に隠されたドラマを勝手に想像してみるのも古本屋巡りの楽しみの一つである。
「緋色の研究」は、僕が生まれて初めて寝食を忘れて読みふけった小説だ。
僕の読書遍歴を旅に例えるなら、ズパリ始発駅ということになる。
日本でいうなら東京駅、タイでいうならバンコクはホアランポー駅だ。
小学2年生の春に読んだホームズは子供向けに訳されていて、題名も「赤の怪事件」と改題されていた。
「緋色の研究つてのは子供にやチト難しいだろう」という訳者の気配りだったらしい。
実に迷訳と言える。
小林たつよし氏はマンガの中でホームズに、題名の意味を次のように語らせている。
「人生という白糸玉の中に混じっている殺人という赤い糸を解きほぐすのが、ボクの探偵という仕事なんだ」名探偵の職人としての哲学を、「ま、色がタイトルに付けば同じようなもんだろ」と、言葉だけ簡単に改題してしまった「赤の怪事件」訳者氏は、題名同様極めて簡単な発想の持ち主だったんじゃないかと思われる。
最近はそんなことはないだろうが、僕が小学生だった噴、日本中の読書少年たちはずい分と珍訳奇訳の海外小説を読まされていたものである。
特にホームズものは数が多い分、へンなもんが多かった。
改題なんかまだいいほうで、ある本では、なんと助手のワトスンが、明智小五郎における小林少年のように少年探偵にキャラ設定変更されていた。
これには子供心に驚いた。
「お、おいfいくら子供向けとはいえワトスンを子供にすんなよ」と思ったもんだ。
子供心に驚いたといえば「空家の冒険」という短編にも驚いた。
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